アジサイの花の色とpH
5月の半ばからアジサイが咲き始めます。梅雨に入ろうという時期に色とりどりのアジサイの花が道を彩ります。
アジサイはその色の変化から「シチヘンゲ」と呼ばれることもあります。ただし今ではシチヘンゲと呼ぶのはクマツヅラ科のシチヘンゲのことが多いです。
アジサイの色の変化は以下の要因によるようです1。 (アジサイのいわゆる「花びら」にみえるところは正しくは「がく」であり、実際の花びらは中央部分に小さくあります。以降は便宜上、全体を「花」と呼ぶことにします。)
アントシアニン
アジサイの花の色を決めているのはアントシアニンと呼ばれるポリフェノールです。アントシアニンはナス、ブドウ、ムラサキキャベツ、ブルーベリーなどにも含まれています。
このポリフェノールの生合成に関する遺伝子の発現が、アジサイの花の色を制御しているとされています。
また、以下のように金属(アルミニウム)との結合が色の変化に非常に重要な役割を果たします。
酸・アルカリ・金属
遺伝子の発現で変わるだけではなく、アルミニウムイオンによって花の色が変わるとされています。
酸性の土壌(pH 5.0未満)ではアルミニウムイオンの水溶性は高くなり吸収されます。 一方で、アルカリ性条件下ではアルミニウムイオンは水に不溶であり吸収されません。
花の液胞のpHが相対的に高い(アルカリ性)ときには、液胞にあるアントシアニンは負電荷を有し、陽イオンであるアルミニウムイオンとキレートし金属錯体を形成します。この時の錯体が青色を示します。そのとき液胞にあるアルミニウムイオンは多くなります。 pHが相対的に低い(酸性)ときにはアントシアニンは正電荷を有します。同じ正電荷を有するアルミニウムイオンとは金属錯体を形成しません。このときにアントシアニンは赤色を示します。
これにより、アジサイの花は土が酸性なら青色になり、土がアルカリ性なら赤くなります。
理科の実験で使われるリトマス試験紙ではアルカリ性では赤色が青色、酸性では青色が赤色になりますが、そのイメージとは反対の色を示します。
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Proceedings of the Japan Academy, Series B, 2021, 51–68, doi: 10.2183/pjab.97.003 ↩︎